興味

私は日本で、日本人の誰かにシリアのことを知りたいと言われたことがほとんどない。私が話すことができるのは、私がいた頃のシリアのことだけだ。それも、たかが三年だ。そのことは分かっている。そして、あの頃私が出会ったシリアの人たちが、二〇一一年以降、どんな言葉を私に伝えてきたかということだけだ。シリアのことを本当に話すことができるのは、シリアの人たちしかいない。

それでも私は話してきた。あの頃、シリア人はパスポートを取得するために、料金の他に自分の血液を一リットルも提供しなければならなかった。有事に備えた輸血用の血液だと言われていた。留学が決まった学生は、ふらふらになっていた。そういうことは誰も知らないと思って、話す。私も、知らなかった。そして今はもう、それどころではないと思って話す。

「グレンダイザー」を知らないシリア人は、子どもから大人までまずいない。国民的アニメだと言っていい。そのことも、私は話してきた。学生たちは小学生の頃、衛星放送が普及する前の地上波放送で見ていた。私も、小学生の時に見ていた。主人公のデューク・フリードは、アラビア語の発音だとドーク・フリードになるが、同じだ。主題歌も同じで、アラビア語で歌われている。

「行け、行け、デューク・フリード。飛べ、飛べ、グレンダイザー」

しかし、興味がないのだと思う。中東情勢は、複雑すぎて理解できない。イスラム教徒は何を考えているか分からない。ニュースやドキュメンタリー番組を見て「心を痛めた」と言い、「考えさせられた」と言う。「何もできない」と言い、「平和な日が一日も早く来るように祈る」と言う。

いつか必ず平和が訪れると言う。興味がないのだと思う。


「あの頃のシリアの話」第三章 再会/隣の隣


グレンダイザー

ロボットアニメ「UFOロボ・グレンダイザー」は、一九七〇年代に放映された永井豪原作のマジンガーシリーズ第三弾。日本では「マジンガーZ」「グレートマジンガー」の後を受けて放映されたが、シリアでこの二作品を知っている人はほとんどいない。人気があるのはグレンダイザーだけだ。この作品の主人公はフリード星から来た宇宙人だが、敵もまた宇宙人で、全宇宙征服を企んでいる。世界征服を企むマッド・サイエンティストとは規模が違う。


「あの頃のシリアの話」は、今出版社を探しています。このBLOGでは原稿の一部を紹介しています。

Daiho Tsuruoka's Works

鶴岡大歩の作品を紹介します